営業力を強化するための販売代理店戦略と実務上の注意点

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商品販売戦略における販売代理店という存在について

商品は素晴らしくても販売力が弱いと売上に繋げることができません。
もちろん、自社で営業部門を充実させるなどの販売力の強化が図れるならば一つの解決といえます。
しかし、ベンチャー企業や中小・中堅企業では、自社だけで販売力の強化を図るのは難しい面があります。
そこで、自社で行うのはメーカーとしての商品の製造だけで(この点も製造設備を自社で抱えず外注に出すファブレス製造も考えられます。)、後は、販売力のある会社に販売代理店になってもらうという対応は適切なものと考えます。
特に、商品のサイクルが短くなっている今日では、旬の内に一気に販売することが必要ですので、自社販売に拘らず販売代理店の活用は合理的な戦略といえます。

販売代理店を利用する際の注意点

さて、こうした販売代理店の活用が合理的な戦略であるとしても、法的に注意すべき点が幾つかあります。
今回は代表的なものを3点挙げ、実務的な対応策を説明します。

注意点1.総代理店(独占代理店)契約を締結する場合

総代理店(独占代理店)契約を締結する場合のものです。
一般論としては、複数の代理店で販売する方が販路の拡大に繋がり易いのですが、大手が代理店になる場合は独占権を要求するでしょうし、独占権を与えた方が宣伝広告に力を入れてもらえる可能性が高まります。
すなわち、複数の代理店が併存するのでは、ある代理店が宣伝広告費を使って商品の知名度を上げても、他の代理店と収益を分け合うだけです。
そのため、どの代理店も宣伝広告に消極的になる危険性があります。
そこで、独占権を付与して収益を独占できるという立場におくことにより、宣伝広告費に力を入れさせるということが考えられます。
このような理由で独占権を与えることが考えられるのですが、独占権を与えた場合には、他に販路を失うのですから、一定の販売量をノルマとして課すことが必要となります。
従来のノルマとしては、

  1. 売れても売れなくても一定量を買わせるという購入ノルマ
  2. ノルマを達成できない場合に罰金を支払わせるという罰金ノルマ
  3. ノルマが達成できなかった場合には付与されていた独占権を失い、通常の代理店になるという独占権喪失ノルマ

などがありました。
しかし、消費者の動向が読みにくい現状では、1の購入ノルマや2の罰金ノルマは厳し過ぎる面があります。
そのため、3のノルマが達成できなかった場合には付与されていた独占権を失い、通常の代理店になるという独占権喪失ノルマが、現状に適しているともいわれています。
いずれにしましても、代理店に独占権を与える場合の対応としては、何らかのノルマを課すことをご検討下さい。

注意点2.セット販売の原則禁止

注意点2は、セット販売の原則禁止です。
本部となるメーカーの商品が良質であっても、代理店側が怪しげな商品やサービスとセット販売をするならば消費者問題を起こしかねません。
そこで、対応としては、セット販売を原則として禁止した上で、どうしてもセット販売したい商品やサービスがあるならば、本部から文書による事前の承諾を得て行うという流れを代理店契約書に明記しておくべきです。

注意点3.販売マニュアルの統一と社員研修

注意点3も消費者問題を生じさせないためのものであり、販売方法について、本部が作成したマニュアルに沿って過剰な表現を用いずに正確に説明することを義務付けるべきという点です。
例えば、健康食品の場合、病気が治る等の表現や薬効といえる表現を用いた場合、薬機法(旧薬事法)違反等になる危険性があります。
このような問題を起こすと商品の販売自体が困難となりますので、代理店側が過剰な表現を用いないように本部側で規制すべきです。
対応としては、代理店契約書で本部側が指示した表現で説明するよう求めると共に、説明のマニュアルを渡すこと及び研修でマニュアル内容の周知徹底を図ることが大切と考えます。

今回は注意点を3点挙げましたが、販路拡大戦略として合理的な販売代理店活用には、他にも様々な法的注意点がありますので、代理店契約書の作り込み等に注意が必要です。

Hiroshi Goshima

Column
Profile

岡山大学法学部卒業、同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。大学院在学中に司法試験に合格。 弁護士登録後は、勤務弁護士を経由せず、当初からパートナー弁護士として飛翔法律事務所を共同経営し、現在に至る。ITビジネス、バイオ、知的財産、フランチャイズ、M&A関係等が多い。実践的で経営的な視点も取り入れた先端的な企業法務の弁護士であり、IPOに関するベンチャー企業支援を行う弁護士の草分的存在でもある。また、同志社大学の学長を理事長とする同志社大学産官学連携NPOの副理事長にも就任しており、各大学の産学官の連携実務に深く携わっている。