ベンチャー企業や中小企業に必要な紛争予防型法務と契約書の重要性

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リスクを未然に防ぐ「紛争予防型法務」

多様なリスクに囲まれた今日、企業が順調に成長するためには、紛争が生じてから対応する事後対応型法務は妥当性を欠きます。
紛争を未然防ぐという予防型法務の体制に切り替える必要があります。
企業法務の分野で、予防型法務が正しいと提唱されてから、相当の期間が経過しています。
未だ予防型法務の体制になっていない企業は早急に転換することが必要です。
特に、ベンチャー企業や中小企業は、トラブルに巻き込まれた場合、企業体力がないため危機に瀕してしまいますので、大企業以上に予防型法務が重要だと認識する必要があります。

ベンチャー企業に最適な紛争予防型法務とは?

それでは、ベンチャー企業や中小企業にとって、適切な予防型法務体制とはどのようなものでしょうか。
ストレートに言えば、「コストが安く、」「手間もかからないもの」となるでしょう。

大企業のように社内に弁護士を置いたり法務部を充実させたりする余裕は、ベンチャー企業にはありません。そのため、「コストが安い」という点は重要といえます。また、法務リスクへの対応に避ける時間も大企業ほどはありませんので、「手間もかからないもの」が望まれます。

結局、ベンチャー企業や中小企業に必要なのは、安くて手間のかからない方法で、紛争を予防することができるものとなります。

ベンチャー企業に必要な明確な記載の契約書の重要性

具体的な方法としては、契約書の充実が基礎となります。
契約自体は、口頭(口約束)でも成立しますが、これでは内容が不明確になります。
内容が不明確であれば、紛争の種になりますし、明確なルール作りがないところではパワーゲームになりますので大企業に押し切られてしまいます。
不明確な内容を巡って紛争にならないためにも、大企業からのゴリ押しに対して自衛するためにも契約書を充実させて明確なルール設定をすることが必要なのです。

そのため、契約書は、「できるだけ明確なもの」を「自社で作成するよう」心掛けるべきです。
「できるだけ明確なもの」とは、相手方に義務を課す場合に不明確な表現を用いないことです。

明確な記載の例

例えば、「速やかに支払う」等の表現で相手方に支払義務を課している場合、自分では、「速やかに」というのは即日又は翌日の意味であると思っていても、相手方は中々支払いをしないで1週間以上も延ばしてしまうかもしれません。それでも「速やかに」としか書いていない場合、1週間は速やかではないと言い切るのは難しいでしょう。

このように支払いを遅らせることを許してしまうと、資金に余裕のないベンチャー企業や中小企業では、資金繰りに支障を来すことも考えられます。そこで、「翌日支払う」とか「2営業日以内に支払う」というような明確な形で相手方の義務を規定すべきなのです。

逆に、自分の義務については、「速やかに」或いは「遅滞なく」等の曖昧な表現を用いても良いでしょう。また、同じく資金繰りの観点では、支払日が土日や祝日であった場合の処理について、自分が回収する側なら「支払日が土日や祝日の場合、その前日を支払日とする。」とすべきであり、逆に支払う側なら「支払日が土日や祝日の場合、その翌日を支払日とする。」とすべきでしょう。
これにより、回収した代金を支払いに充てるということができる訳です。

自社で契約書を作成することが重要

以上より、パワーゲームになると大企業に押し切られる可能性のあるベンチャー企業や中小企業は、契約の条件を明確な表現(相手方の義務は解釈の余地を残さない表現)で契約書を作成することにより、自衛を図ると共に、契約内容の明確化によって紛争自体を防止すべきなのです。
また、自社に有利な契約条項(支払日が土日や祝日の場合の処理はその一例)にするためには、自社で契約書を作ることが必要です。

相手方が、皆様にとって有利な契約書の案を作成してくれるはずがないからです。
書籍或いはネット上に契約書の雛形はたくさんありますので、それを参考に自社で契約書の原案を作り、その中でも重要なものだけを外部の弁護士にチェックさせて(全ての契約書を弁護士にチェックさせるのは、コスト的に高くて無駄が多いです。)、相手方に提示し、契約書を締結してから取引を開始するようすれば、紛争を事前に予防することができるでしょう。
契約書の重要性を認識することにより、ベンチャー企業や中小企業の皆様が法的なリスクに悩まされないで、企業活動を盛んにして頂ければと願っております。

Hiroshi Goshima

Column
Profile

岡山大学法学部卒業、同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。大学院在学中に司法試験に合格。 弁護士登録後は、勤務弁護士を経由せず、当初からパートナー弁護士として飛翔法律事務所を共同経営し、現在に至る。ITビジネス、バイオ、知的財産、フランチャイズ、M&A関係等が多い。実践的で経営的な視点も取り入れた先端的な企業法務の弁護士であり、IPOに関するベンチャー企業支援を行う弁護士の草分的存在でもある。また、同志社大学の学長を理事長とする同志社大学産官学連携NPOの副理事長にも就任しており、各大学の産学官の連携実務に深く携わっている。